ストロー

頭の中の整理

イチジクの葉の文化的側面

先日、DEMETERというアメリカの香水ブランドが日本でポップアップイベントをしていたので行ってみました。香水は通常いくつかの香りがブレンドされていて時間と共に変化していくのですが、DEMETERは香りがブレンドされていないシングルノートの香水ブランド。110種類ほどの香りを比較したのですが、一番好きな香りはフィグリーフという香りだったので購入してみました。

ボトルがシンプルで可愛い!香りごとにラベルの色が違うので集めても楽しそうです。

フィグリーフはミルキーなイチジクの果実と葉の青っぽさを混ぜたような大人っぽい香りです。

 

DEMETERでは、シンブルなイチジク(フィグ)の香りは無く、イチジクの葉(フィグリーフ)のみ展開されており、何故あえてフィグリーフだけなのだろうかと思ったのですが、公式サイトの香りの説明を読みに行ったら分かりました。

demeterfragrance.com

 

上記URLからの引用

Our perspective on Fig Leaf is simple; fresh, fruity, subtle and true. Fig Leaf by Demeter is like a sun-drenched weekend on the Mediterranean coast, refreshing and calming at the same time.

And not Adam's Fig leaf at all. That fig leaf has attained a special place in art history, used to hide the marble penises and stone nudes that were, at various times, seen as moral and mortal dangers to public morality.

By Epictetus
No greater thing is created suddenly, any more than a bunch of grapes or a fig. If you tell me you desire a fig, I answer you there must be time. Let it first blossom, then bear fruit, then ripen.

訳:

我々のイチジクの葉に対する見方はシンプルである。新鮮で、フルーティで、繊細で、純粋。DEMETERのフィグリーフは地中海の太陽が照り付ける週末。リフレッシュと落ち着きを同時に感じさせてくれます。

イチジクの葉はアダムの体を隠すだけでなく、公共のモラルに反するような彫刻の裸体や陰部を隠すものとして、美術の歴史の中で重要な位置を占めるようになりました。

エピクテトス曰く「ブドウやイチジクの房が突然実らないのと同じように、どんな偉大なものも突然には生まれてこない。イチジクが欲しいと言うならば、それを得るには時間がかかると答えよう。初めに花が咲き、次に実がなり、そして熟すのだ。」

 

アダムとは、旧約聖書の創世記に登場する最初の人類のこと。禁断の果実を食べたアダムとイヴは裸体でいることが恥ずかしくなり、イチジクの葉で体を隠すようになった。それを知った神はアダムとイヴをエデンの園から追放し、人類は原罪を背負った。

イチジクはアラビア半島南部が原産地で、メソポタミアアナトリア、地中海沿岸へと伝わっていきました。イチジクの生えている地域はキリスト教の興った地域と縁が深いです。ギリシャ、トルコ、エジプト、イタリア南部など地中海の周辺地域では自生しているし、よく栽培されている身近な果物らしい。地中海は日光が強く、日本のイチジクよりも葉が大きいみたいです。その辺に生えてるしデカいし体を隠すのにちょうどいい。古代人にとっても身近なものだったため、旧約聖書にも登場したのでしょうか。イチジクの葉というのは、西洋世界では象徴的なモチーフです。旧約聖書のエピソードから、羞恥や原罪のシンボルとして絵画に描かれます。また、身近なフルーツであるため、静物画としても人気らしい。

 

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アンドレーア・マンテーニャ《聖セバスティアヌス》
1480年 ルーヴル美術館収蔵

Andrea Mantegna
Saint Sébastien (Saint Sébastien d'Aiigueperse)
1480
Musée du Louvre, Paris

 

左下、足元のところにイチジクの葉があります。

聖セバスティアヌスについてはこちらの記事をどうぞ。

goodbyesummer.hatenablog.com

 

DEMETERの気になる香りのページを色々見てみたのですが、フィグリーフは特にコンセプチュアルでストーリーのある香りのようで、ますます愛着が湧きました。

 

 

参考

CiNii 論文 -  恵泉 果物の文化史(5)イチジク

イチジクは「羞恥」の象徴?エデンの園の甘美な果実 | / ARTLOGUE