ストロー

頭の中の整理

お話でてこい「ウィッピピーストーリー」という魔女の研究

NHKのラジオ番組に「お話でてこい」っていう番組があるんですけど。幼児、児童向けの童話読み聞かせ番組です。1954年から現在も続いている長寿番組らしい。CDも出してるみたいで、小学校のお昼の放送で毎日かかってました。うちの学校で一番人気だったのは「ウィッピピーストーリー」というお話。なんかこのお話だけ口調がユーモラスでインパクトがあり、みんな爆笑してて断トツ人気でした。ウィッピキーストーリーだと思ってたんだけど、検索したらウィッピピーストーリーって言ってる人が多いのでそちらで表記します。

 

 

ストーリーはこんな感じです。

今日のお話は間の抜けたお話。昔々あるところに母親と赤ん坊が2人で暮らしていました。とても貧しく、食べるものもない暮らし。市場に売りに行くため飼っている豚が病気になってしまったが、薬を買うこともできない。母親が困り果てていたところ、おばあさんが通りかかりました。なんとおばあさんは魔法の薬を持っていて、豚を治してくれました。

魔女「不思議な水がポタッーポタッ」

母親「ありがとうございます。どう感謝してよいやら。」

おばあさん「お礼はお前の赤ん坊でいい。私の名前を当ててみろ。3日後までに当てられなければお前の赤ん坊を貰っていく。」

なんとおばあさんは魔女だったのだ。魔女の本名など分かるはずもなく再び困り果てる母親。2日考え込んでも分からず、気分転換に散歩に出かける。森を散歩していると、奇妙な歌声が聞こえてくる。

魔女「♪ぐるんぐるんぐるん糸車 回れ~回れ~糸車 だーれも知らない私の名前 ウィッピピーストーリー ウィッピピーストーリー ウィッピピーウィッピピーストーーーーーーリーーーーーーーーーーー」

母親「分かった!魔女の名前はウィッピピーストーリーだわ!」

翌日、魔女が訪ねてくる。

魔女「さて、私の名前は分かったかい?3回で当てられなければ赤ん坊を貰う。」

母親「あなたの名前は…ドラゴン…マザー?」
魔女「ひぇーっひぇっひぇっひぇ 違うよ!」
母親「あなたの名前は…ファイアー…ボール?」

魔女「違う違う。さあ赤ん坊を貰っていくよ。」
母親「あなたの名前は、ウィッピピー!ストーリー!」
その瞬間魔女は空中高く飛び上がると、叫び声を上げて花火のように爆発しました。

魔女「ぎぃやぁーーーーーーーー!やーらーれーたーーーーー」

おしまい。

 

語り手は香椎くに子さんだそうです。

魔女の喋り方がめちゃくちゃ面白いんですよね。魔女の歌が小学生にはとにかくバカウケ。あとドラゴンマザーとかファイアーボールとか奇妙な単語も面白い。そもそも何で2回フェイントを挟むのか。

 

お話でてこいを流してた学校が限られるのか、調べても言及してる人がなかなか見つからない。てかこれ私が日本で一番詳しく覚えてるのでは?

 

物語類型としては、悪魔の名前当て化け物問答のパターン。

グリム童話の「ルンペルシュティルツヒェン」や、イギリス民話の「トム・ティット・トット」が下敷きになって創作された番組オリジナル(?)と思われます。糸つむぎというモチーフも共通している。

グリム兄弟 Bruder Grimm 楠山正雄訳 ルンペルシュチルツヒェン RUMPELSTILZCHEN

 

本名を知ると相手を支配できるという、名前の神聖性が物語になったものです。

日本でも、平安時代から江戸時代にかけて、幼名が使われていました。幼い子供は死亡率が高く、死ぬのは魔に魅入られて連れていかれるからだとされていたので、幼名はわざと汚いものの名前をつけたれたりしていたとか。とにかく名前は神聖という概念は世界中にあるみたいです。

 

日本では「大工と鬼六」というお話がこのパターンです。詳しくは下記サイトで説明されています。

鬼六の大工が、ヴィンランド・サガのクヌートの敵方だった、というお話。「だいくとおにろく」松居 直 再話、赤羽 末吉 絵 - まず米、そして野菜

『だいくとおにろく』は日本の昔話ではない。 | 絵本沼。

・「大工と鬼六」「ルンペルシュティルツヒェン」「トム・ティット・トット」のように 『人間が鬼や悪魔的... | レファレンス協同データベース

 

ウィッピピーストーリーをもう一度聞きたいのですが、音源が見つからず……。

図書館が閉館しているので、再開したら探してみます。