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「火垂るの墓」は誰が悪かったのか?答えは「誰も知らない」を見て

是枝裕和監督の映画「誰も知らない」は、母親に育児放棄され、子供達だけでアパートに残された4人の幼い兄弟のお話。下の子の世話をしている長男は、公的支援を受けると兄弟バラバラに引き離されてしまうと言って、他人を頼ろうとしない。その結果、子供だけでは生活は当然立ち行かなくなり、生活が破綻して末の妹を死なせてしまう。兄弟4人だけの世界を守ろうとするあまり、外界を拒否して、結果的に心中することになってしまうのだ。

ジブリアニメ「火垂るの墓」は、金曜ロードショーで放送される度に、節子が死んだのは誰が悪かったのかという論争になる。主に、①働こうとしなかった清太さんが悪い派、②冷たく追い出した西宮のおばさんが悪い派、③戦争という時代が悪い派の3つに分かれている。火垂るの墓反戦映画ではない。誰も知らないと同じ、清太と節子の心中物だった。清太は節子との2人だけの世界で過ごすのがラクで、働いて外界と関わることを拒否し、ずるずるとそれを続けた結果、西宮のおばさんの家から追い出される。住む家も食料も薬も無くなっても、2人だけの安心できる世界に閉じ籠ろうとした。その結果、節子を死なせてしまう。「誰も知らない」は戦争が無かった場合の「火垂るの墓」である。この兄妹は戦争が無かったとしても2人だけの世界に逃げて心中するだろう。働けオーラを出してくる西宮のおばさんは、社会の風潮や圧力を代弁しているキャラクターである。よって、②西宮のおばさんが悪い派と③戦争という時代が悪い派の解釈は製作者の意図的には誤りである。(解釈は見た人の自由だが) 清太さんが悪いというか……悪いというわけではないんだけど、結局それじゃ人は生きてゆけないんだよね。

どちらの映画も、人は人と関わる社会の中でしか生きられない、ということを言いたいのだと思う。
最近「カードファイト!! ヴァンガードG」というアニメを見始めたのだが、過去のトラウマのせいで冷めてて他人と関わろうとしない主人公が「他人と一切関わろうとしないラクな生き方」と言われて成長し変わっていくというストーリーで、あぁこれだ……となった。感情移入して刺さるのでやめてくれ。(このシーンまじで刺さる↓ 再生開始時間合わせてあるから見て)

youtu.be

 

誰も知らないはキャストの演技が素晴らしいですね。自然で、演技してる感が無い。特に柳楽優弥とYOUはナチュラルで好き。ドキュメンタリーに見えるように、演技感や作り物臭を消す、監督の演出手法が光る。

 

火垂るの墓は、みんな金ローのテレビ放送で見るから最初のシーンを見逃しているのかもしれないけど、冒頭が重要で、「死んで幽霊になった清太さんが、自分と妹が死ぬまでの数か月間を繰り返し見ている。この映画はその清太が見ている内容である」ということが示唆されていて、清太は死んでも成仏できずにこの世を彷徨っている、そしてそれは何故なのか、何が清太の心を縛っているのか、何に後悔しているのか、それを伝える内容になっている。