ストロー

頭の中の整理

山月記の虎とは人の心に住む歪んだ感情のこと

私の中でずっと練られている山月記についての話。結論から言うと、「人生を支配し、身を亡ぼすほどの、コントロールできない歪んだ感情」は、制御出来ないとやがて周りの人を傷つけて自分自身を苦しめる、ってことです。
山月記、高校の教科書でみんな読んだことあると思うんですけど。主人公の李徴は子供の頃から皆に頭良い!天才!と言われて過ごしてきて、俺は他の奴とは違って天才なんだぞと思ってて超プライドが高くて他の人を見下してる。難しい試験を突破して国家公務員になったんだけど、天才の俺は役人なんかじゃなく歴史に名を残す人物になりたい、だから作家になるっつって国家公務員やめちゃって、でも作家として有名になることはなく承認欲求と自意識に飲まれる、っていう話。李徴が囚われたのは、「臆病な自尊心」と「壮大な羞恥心」。プライドの高い李徴くんは、歴史に名を残す!とか言いながら、恥をかくのが嫌で、仲間に作品を見てもらうなど作家としての研鑽をしてこなかった。その「臆病な自尊心」と「壮大な羞恥心」は李徴の内面の、コントロールできない感情であり、それは李徴の考え方や行動を支配し、人生の行方までも変えてしまい、身を亡ぼした。山月記の中では、比喩でなく実際に体が虎になってしまっている。体だけではなく、そのうち理性も虎になるらしい。
 
「人生を支配し、身を亡ぼすほどの、コントロールできない激情」が「猛獣(虎)」に例えられているのが山月記。この概念が便利すぎて、私はいろいろな場面で「あっこれ虎のことだな~」って思ってる。
 
自分の心に住む虎が何か理解しそれを制御出来ないと、やがて自分が虎になり、周りの人を傷つけて自分自身を苦しめるんだよね。創作物語でも、現実世界でもそんな人いっぱいいるのよ。李徴にとっての虎は「臆病な自尊心」と「壮大な羞恥心」だった。人によって何が虎なのかは違う。私の虎は……これかなぁ。
 
恋愛で身を持ち崩してる人に対してよく思うことなんだけど、自分の人生の軸を他人に渡してしまったらそれはもう自分ではハンドル(制御)出来なくなってしまうから、他人に渡した瞬間に余計に苦しむことになるんだよね。渡したその人が自分の思い通りに動くという訳ではないから。極論、私の事好きになってよ!って懇願されてハイ好きですとなるっていうもんでもないからね、恋愛感情って。恋愛以外にも、人に主導権渡してしまうこと全般そう。親子関係とか、労働とか。他人は変えられないから、そっと距離を置こう。
 
李徴の「後世に名を残す人が立派!」っていう考えも、私は「そうか?」と思うけどね。褒められることってそんなに良いものかね。死んだら何も分かんなくなるんだから同じじゃん。その考えに囚われて苦しんでるなら、そんなもん無駄だから早く気づけばいいのに~って思う。可哀想で可愛い李徴くん……。そもそも「後世に名を残す人が立派!」っていう価値観自体、世の風潮とか他人の意見とかを内面化したものに過ぎないんだら、まず自分でその常識を疑ってみた方が良いと思う。なんだろ、教育虐待する親とかそれだよね。

名古屋教育虐待殺人事件「何が教育熱心な父親を子殺しに駆り立てたのか?」 | 文春オンライン

母に医学部受験を強要されるなどしていた娘が母を殺害したとされる事件の「犯行に至る経緯」が非常にむごい。これで懲役15年って… - Togetter

 

実際の事件の犯人で言えば、黒子のバスケ脅迫事件の犯人とかまさに、虎に飲み込まれてしまってるな~って思う。傍目から見ると、あー虎に気づいて制御できるようになった方がラクだよ……って思う。

「黒子のバスケ」脅迫事件 被告人の最終意見陳述全文公開(篠田博之) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

まぁこういう事件まで行くのは一握りでも、誰でも多かれ少なかれそういう囚われているものってあると思うので、飲み込まれないようにしようね。